「お疲れ様です」
「お疲れ様です」
さわやかな朝の挨拶が、澄みきった青空にこだまする。
農水省のお庭に集う漢たちが、今日も天使のような無垢な笑顔で、背の高い門をくぐり抜けていく。
汚れを知らない手に持つのは、深い色のスポーツ紙。
人の買い目には惑わされないように、最後の直線で叫び声をあげないように、
騎手の非難などしないのがここでのたしなみ。
もちろん、除外馬が出たレース後に地面を見て歩くなどといった、はしたない会員など存在していようはずもない。
競馬ヒヒーン。
1990年創立のこのサークルは、もとは競馬好きの学生ためにつくられたという、
伝統ある大学競馬サークルである。
京都府下衣笠山。室町の世の面影を未だに残している緑の多いこの地区で、お上に見守られ、 1回生から8回生までの一貫教育が受けられる競馬好きの園。
時代は移り変わり、テイオー、ナリブ、オペラオーと名馬が移り変わった今日でさえ、
8年通い続ければ温室育ちの純粋培養競馬馬鹿が箱入りで出荷される、
という仕組みが未だ残っている貴重なサークルである。
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